主版本
#477
深々と桜が舞っていた。 一年中絶えることなく、 その島では薄桃色の桜の花が咲き誇っていた。 ――季節は冬。 地面にはうっすらと霜が降り、空からは純白の結晶が舞い落ちる。 吐き出す息も白く色づき、布団から抜け出すのが憂鬱になる季節。 だと言うのに、 「相変わらず、季節感のない景色だよな」 通学路の桜並木を歩きながら、少年――義之はそう呟いた。 「まぁ、それが初音島名物『枯れない桜』だしね」 「や、今更そんなことをしみじみ言われても」 少し前を歩くふたりの少女が振り返る。 ひとりは楽しそうに笑顔で、 もうひとりは少しかったるそうに。 それも見慣れた景色。 少年は春のように咲き誇る桜の木々を見上げて、白い息を吐き出した。 間近に迫るクリスマスパーティー。 そして、年が明けたら付属最後の学園生活がはじまる。 出会いと別れ。喜びと悲しみ。 そこにどんな日常が待っているのかはわからない。 でも――、 何かが変わりそうな気がする。 ゆらり、ゆらりと舞い落ちる桜の花びらを眺めながら、 ――少年は少し先の春を夢見た。
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